採用面接で「結婚の予定はありますか」と聞いていいか。育児休業を取る社員に「次の評価は分からないよ」と言っていいか。経営者や管理職の方に伺うと、即答できる方は意外と少ないです。
先日、中小企業診断士の更新研修で「人材確保・定着のための職場環境改善」を受講しました。採用、人事評価、育児・介護との両立支援など、普段の支援で触れているテーマばかりでしたが、改めて確認しておきたいことが多くありました。要点を整理します。
面接で聞いてよいかは「何のために聞くのか」で決まる
結婚の予定、交際相手の有無、家族の職業や収入。会話の流れで何となく聞いてしまっている面接は少なくありません。ただ、こうした情報は本人の能力や適性との関わりが薄く、公正な採用選考の考え方として、原則として把握しないよう国の指針で整理されています。
一方で、入社後すぐに遠隔地への転勤が予定されている職種なら、転勤に対応できるかを確認する必要はあります。業務上必要な範囲で、必要なことを確認するのは問題ありません。
つまり「何でも聞いたらダメ」でも「採用なのだから何でも聞いていい」でもありません。その情報を何のために聞くのか。ここが説明できるかどうかが線になります。
募集時に伝えた条件を変えるなら、早く伝える
求人票の書き方も同じです。給与、勤務地、仕事内容など、募集時に示した条件を途中で変える場合は、できるだけ早く変更内容を伝える必要があります。「入社してから説明すればいい」は、あとでトラブルになります。
制度を作って終わりではない——育児・介護との両立
両立支援は、制度を用意しただけでは足りません。会社側には次のことが求められています。
- 制度を利用しやすい環境をつくる
- 制度を利用したことを理由に、不利益な扱いをしない
- 制度の利用を妨げるような言動をしない
たとえば「育休を取るのはいいけど、次の評価は分からないよ」という一言。軽い冗談のつもりでも、制度の利用を妨げる言動にあたる可能性があります。
逆に、制度を使った社員だから評価を下げてはいけない、という単純な話でもありません。実際の働きぶりや目標の達成度に課題があれば、評価はできます。ただし「なぜその評価なのか」を具体的に説明できる状態にしておく必要があります。
評価制度の本質は、説明できること
ここは、私が普段お手伝いしている人事評価制度の話とそのままつながります。評価制度で大切なのは、評価表を作ることではありません。
- 何を期待しているのか
- 何ができたら評価するのか
- なぜこの評価になったのか
この3つを説明できる状態になっていれば、両立支援の利用者に対しても、そうでない社員に対しても、同じ基準で向き合えます。説明できない評価は、どこかで必ずもめます。
介護については、会社側の対応が増えている
介護についても、近年の法改正で会社が対応すべきことが増えています。介護に直面した社員への個別の周知と意向確認、一定の年齢に達した社員への情報提供などです。従業員の親世代が高齢になる会社ほど、この対応の有無が定着に直接響きます。
人材確保と定着は、一本の線
人手不足だから採用する。ところが、採用の入口でミスマッチを起こしたり、入社後に育児や介護との両立ができず退職されたりすると、結局また採用活動に戻ります。
- 求人の出し方
- 面接の仕方
- 労働条件の伝え方
- 評価制度
- 育児・介護への対応
- 働き方の選択肢
これらは別々の施策ではなく、一本の線でつながっています。採用広告だけを増やしても、線のどこかが切れていれば人は残りません。
なお、個別の事案がどこまで許されるかの判断は、社会保険労務士や弁護士に確認してください。この記事は考え方の整理であって、個別の法的判断ではありません。

