先日、久しぶりに野球を観に行きました。楽しんだのは試合そのものですが、経営の目で面白かったのは球場の周辺のほうでした。
観戦のあと、隣接する施設で子どもを無料で遊ばせることができます。小さな子どもがいる家庭だと、大人は試合を見たいのに子どもが途中で飽きる、ということが普通に起きます。ところが観戦だけで終わらず、その前後まで含めて一日過ごせるようになっている。
「この人と一緒に来るのは誰か」を考えているか
多くの会社は、お客様本人のことは熱心に考えています。年齢、職業、悩み、予算。ところが、その人が誰と一緒に来るのかまでは考えていないことが多いのです。
本人が満足しても、一緒に来た人が退屈していれば、次はありません。「よかったね」と言い合えなければ、また行こうという話にならないからです。決めているのは本人でも、繰り返すかどうかは同伴者が握っていることがあります。
商品そのものではなく、その前後を設計する
球場の例で効いていたのは、試合の中身ではありません。試合が終わったあとの時間です。自社の商品やサービスでも同じことが言えます。
- 来る前——予約の取りやすさ、駐車場、待ち時間の過ごし方
- 本体——商品やサービスそのもの
- 帰りぎわ——次の来店の理由が渡っているか
- 同伴者——一緒に来た人が、その時間をどう過ごしたか
多くの会社は真ん中だけを磨いています。ところがお客様が覚えているのは、前後を含めた全体です。そして前後のほうが、たいてい安く改善できます。
法人相手でも、同じことが起きている
これは個人のお客様に限った話ではありません。球場では、スポンサー企業にユニホームが配られていました。広告の枠を売るだけなら、渡すのは掲載証明で足ります。そこに体験を足している。
法人取引でも、契約しているのは会社ですが、続けるかどうかを判断するのは人です。担当者が社内で「あれは良かった」と言えるかどうかで、更新の話は変わります。窓口の担当者だけでなく、その上司や現場の人がどう感じたかまで含めて、取引は評価されています。
自社に当てはめるときの問い
次の3つを、実際の案件を思い出しながら答えてみてください。
- うちのお客様は、誰と一緒に来ているか。あるいは社内の誰と一緒に決めているか
- その人は、うちと接している時間をどう過ごしているか
- その人にとって、もう一度来る理由は何か
2つ目に答えられない会社が多いはずです。見ていないからです。見ていないところは、設計もできません。
次の世代に残るのは、記憶のほう
もう一つ思ったことがあります。施設やスポーツを次の世代へ残していくには、子どもに「楽しかった」という記憶を残すことが要る、ということです。
子どもの頃に親と行った。そのあと遊んだ。楽しかった。その経験があれば、大人になってまた足を運ぶかもしれません。次の世代へ何かを残すというと大きな話になりがちですが、実際に残っていくのは、こうした小さな体験の積み重ねなのだと思います。
会社も同じで、事業を次に渡すというのは、設備や取引先を渡すことだけではありません。「この会社と仕事をしてよかった」という記憶を、何人に残せたか。渡せるものの多くは、そこから生まれます。

