「御社は何をやっている会社ですか」。この質問に、すらすら答えられるでしょうか。
自分の会社のことなのだから即答できそうなものですが、事業が複数あると途端に難しくなります。私自身もそうでした。提供しているものを並べると、聞いた相手に「それぞれ何の関係があるんですか」と言われてしまう。今回は、この問いに答えを出すためのやり方を書きます。
商品を並べても、会社の説明にはならない
会社案内やホームページの「事業内容」を、提供メニューの一覧にしている会社は多いと思います。ところがこれを読んだ相手の頭に残るのは、たいてい一つか二つです。
しかも、扱っているものが増えるほど一覧はばらけていきます。長く続いている会社ほど、お客様に頼まれて対応してきたものが積み上がっているので、並べると脈絡がないように見えます。中身が悪いのではなく、並べ方が悪いのです。
「何を売っているか」ではなく「何を何に変えているか」
そこで、問いを変えてみます。
- うちは、何を売っている会社か
- うちは、お客様の何を、何に変えている会社か
上は提供物を答える問いです。下は、お客様に起きた変化を答える問いです。同じ会社を説明していても、出てくる言葉がまるで違います。そして、バラバラに見えていた商品の共通項は、下の問いでしか見つかりません。
提供物は事業ごとに違って当たり前です。共通するとしたら、それは「何が何に変わったか」の部分だからです。
私自身でやってみた結果
私がお受けしているのは、法人の決済まわりの見直し、財務とキャッシュフローの支援、社外CFO、事業計画づくり、人事評価制度です。並べると、決済と人事評価に何の関係があるのかと言われます。
そこで一つずつ「お客様の何が、何に変わったか」で書き直してみました。決済の見直しは、ただ出ていくだけだった経費が、別の価値になって戻ってくる状態に変わっています。財務の支援は、なんとなく不安だったお金が、投資も採用も賞与も判断できる材料に変わっています。人事評価制度は、ただの人件費だった支出が、社員の成長と会社の成長につながる仕組みに変わっています。
三つとも、会社から出ていくお金を扱っていて、その使い道を未来の価値に変えることをしていました。提供物で見ていたときには、まったく気づきませんでした。
言葉としてはまだ磨いている途中です。ただ、軸が一本見つかっただけで、どの依頼を受けるかの判断がはっきりしました。
やってみるときの順番
手順は三つです。
- 提供しているものを、細かくてもいいので全部書き出す
- 一つずつ「お客様の何が、何に変わったか」を、実際にあった案件を思い出しながら過去形で書く
- 書き出した変化を並べて、共通している動きを探す
二つ目を過去形で書くのが要点です。「変えられます」と書くと理想を書いてしまいますが、「変わった」と書こうとすると、実際に起きたことしか書けません。過去形で書けない項目が出てきたら、それは自社の看板にはまだ早い、という判断材料にもなります。
見つかると、決められることが増える
変化で定義できると、日々の判断が楽になります。新しい商品を足すかどうかを、同じ変化を起こせるかで決められます。断るべき依頼も判断できます。社員が会社を説明するときの言葉も揃います。
逆に、提供物でしか自社を説明できていないうちは、価格でしか比べてもらえません。同じものを扱っている会社は他にもあるからです。
一人で考えると、たいてい出てこない
最後に一つ。この作業は、頭の中だけでやると答えが出ません。私も紙に書き出して、人に読んでもらって初めて言葉になりました。
経営者は自社の商品を毎日考えているのに、自社の価値を言葉にする機会だけは、意外なほど持てていないものだと思います。時間を取って書いてみる価値はあります。

