法人カードの相談を受けていて、いちばん多い質問は「結局どのカードが一番お得ですか」です。ただ、この聞き方をしている限り、カードの効果は頭打ちになります。
先日、カードの無料宿泊特典を使って軽井沢に泊まってきました。これを「ホテル代が浮いた」で終わらせるなら、それだけの話です。実際に効いてくるのは、その先の組み立て方でした。
特典を単体で見ると、価値を取りこぼす
宿泊特典の価値を「一泊いくらのホテルに無料で泊まれたか」で測ると、話はそこで終わります。ところが実際の旅程は、宿泊だけで成り立っていません。
- どこを歩き、何を見るか
- どこに泊まるか
- どこで食事をするか
- どこで買い物をするか
軽井沢の場合、同じ系列のホテルと大型のアウトレットが隣接しています。つまり「どこに泊まるか」を先に決めると、食事も買い物も移動も自動的に決まります。宿泊が無料になったこと以上に、行程全体が一つにまとまることのほうが効いていました。
特典は、単体で価値を測るものではありません。何と組み合わせるかで、同じ特典でも残る価値が変わります。
「還元率が高い」と「実際に使える」は別の話
もう一つ、カードを比べるときに抜けやすい観点があります。貯めたあと、それを本当に使えるのかどうかです。
特典には必ず条件がついています。交換先ごとの上限、対象になる施設や路線、使えない期間、予約の取りやすさ。表面の交換レートが良くても、希望の日程が押さえられず、結局そのまま失効する。この相談は本当に多いです。しかも各社の条件は数年おきに改定されるので、一度調べた知識はすぐ古くなります。
ですから私は、条件表を机の上で比べるだけでなく、実際に自分で使うようにしています。予約がどれくらい取りにくいのか、現地でどこまで使えるのか、換算すると結局どれくらいの価値になるのか。ここは体験しないと語れません。
出口を先に決めると、選ぶカードは自然に決まる
会社としてカードを考えるときに先に決めておきたいのは、還元率ではなく出口です。貯まったものを、最終的に何に変えるのか。
- 経営者と家族の時間に変える
- 社員への還元に変える
- 出張の負担軽減に変える
- 経営者自身の経験に変える
出口が決まれば、条件表のどこを見ればいいかも決まります。逆に出口が決まっていないと、還元率という一つの数字しか比べるものがなくなります。同じ金額を払っていても、最後に会社と人に残るものは、支払い方の設計で変わります。
なお、貯まったものを誰の名義で受け取るかは、税務上の扱いが分かれます。ここは決める前に顧問税理士に確認してください。
これは、自社の商品の売り方の話でもある
今回、現地の方から聞いて興味深かったのが、軽井沢の観光が夏だけのものではなくなってきているという話でした。以前は夏を中心に営業する店も多かったそうですが、最近は冬も営業する店が増えているとのことです。避暑地から、年間を通して来てもらう場所へ。街そのものが変わってきています。
同じ場所、同じ資源でも、いつ売るか、誰に来てもらうか、何と組み合わせるか。この3つを変えるだけで価値は大きく変わります。これは自社の商品やサービスでもまったく同じです。
単品の性能で勝負しようとすると、比べられるのは価格だけになります。カードを還元率だけで比べてしまうのと同じ構図です。組み合わせで価値をつくると、比較の土俵そのものが変わります。
机の上で調べるだけでは、分からないことがある
カードの条件は公開されていますし、調べれば表は作れます。ただ、予約の取りにくさや、現地での使い勝手、行程として組んだときにどれくらい効くのかは、資料には載っていません。
実際に使って、体験して、確かめたものだけをお伝えする。地味ですが、これがいちばん外れないやり方だと思っています。

