財務のこと、人事評価制度のこと、事業承継のこと、そして経費とクレジットカードのこと。私がお受けしている相談は、並べてみると領域がまたがっています。「結局、何の専門家なんですか」と聞かれることもあります。
もっともな疑問だと思います。ただ、私の中ではこれらはバラバラの仕事ではありません。同じ一つの目的につながっています。今回はその線を、はっきり言葉にしておきたいと思います。経営者の方がご自身の会社を見直すときの物差しにもなるはずです。
残せる会社は、次の世代に残したい
私の父も会社を経営していましたが、その会社がなくなる経験をしています。会社が一つなくなると、失われるのは売上や利益だけではありません。そこで働いていた人の仕事、その家族の生活、長年積み重ねてきた技術や信用。そういうものまで一緒になくなります。
ですから私には、残せる会社は次の世代に残したいという思いがあります。とくに、利益が出ているのに後継者がいないという理由だけで会社を閉じる「黒字廃業」を、できるだけ減らしたい。私がお受けしている仕事は、突き詰めるとすべてここにつながっています。
会社を次に渡すために、必要なことは4つある
会社を次の経営者に渡せる状態にするには、順番に整えていくことがあります。整理すると4つです。
- 数字を見えるようにする
- 社長一人に判断が集中しない組織をつくる
- 社員が育つ仕組みをつくる
- そのうえで、次の経営者へ渡していく
並べてみると、1つ目が財務の仕事です。2つ目と3つ目が人事評価制度の仕事です。4つ目が事業承継の仕事になります。順番が逆になることはありません。数字が見えないまま組織を変えようとしても、何を評価すればいいのかが決まりません。社長一人しか判断できない状態のまま会社を渡しても、渡された側が動けません。
つまり、財務と人事評価と事業承継は別々のサービスではなく、同じ一本の道の、違う地点にある工程です。バラバラに見えるのは、経営者から見て「今どの地点にいるか」がそのときどきで違うからにすぎません。
数字は、人を追い詰めるためのものではない
もう一つ、私が大事にしている考え方があります。数字は、人を追い詰めるために使うものではないということです。
財務の数字も、人事評価の点数も、使い方を間違えると「できていない人を特定する道具」になります。そうなった評価制度は必ず形骸化します。誰も本当のことを書かなくなるからです。数字は、人と会社の未来を豊かにするために使うものだと考えています。
だから私は、評価の点数をそのまま賞与の金額に変換するやり方を勧めていません。会社の利益がいくら出て、そのうちいくらを社員に配るのかを先に決める。そのうえで配分の根拠として評価を使う。順番をこうすると、評価は「詰めるための道具」ではなく「還すための根拠」になります。
経費とクレジットカードの話も、同じ線の上にある
経費の決済をクレジットカードに寄せる話も、私の中では同じ線の上にあります。「何円得します」という話だけをしたいわけではありません。
どのみち払う経費なら、そこから生まれたものを、家族との旅行に変えたり、社員への福利厚生に変えたり、経営者自身が少し豊かな経験をできるようにしたい。会社を続けていくには、経営者本人が消耗しきってしまわないことも必要です。ここも「未来を豊かにするために数字を使う」という同じ考え方の応用です。
支援がバラバラに見えるときに、確認したいこと
ここまでは私自身の話ですが、経営者の方にも使える見方があります。今、会社に関わっている専門家が複数いる場合、それぞれが「何のためにその仕事をしているか」を答えられるかどうかを見てみてください。
顧問が何人いても会社が変わらないとき、多くの場合、能力が足りないのではありません。それぞれが違うゴールに向かって最適化しているのです。税金を最小にすることと、銀行から借りやすい決算にすることは、同じ方向を向かないことがあります。評価制度を整えることと、人件費を抑えることも同じです。
ですから、まず経営者が「この会社をどうしたいのか」を決める必要があります。それが決まっていれば、関わる専門家の仕事は自然に一本につながります。決まっていなければ、どれだけ優秀な人を集めても、バラバラのままです。
私が社外CFOとしてお受けしているのは、この「どうしたいのか」を経営者と一緒に決めて、そこから数字と組織を逆算していく仕事です。財務も人事評価も事業承継も、そのための手段にすぎません。

