先日、姫路市の室内野球練習場を訪問した記事を書いたところ、その投稿を読んだ方から問い合わせをいただきました。投手指導を専門とされているコーチの方です。お話ししてみると、経営として面白い話になりました。
本稿のテーマは、使われていない設備やスペースをどう扱うかです。工場の空きスペース、稼働率の低い機械、使っていない倉庫や会議室。持っているのに使っていないものは、どの会社にもあります。
使っていない場所は、放っておけばコストのまま
その練習場には広い屋内スペースがあり、すでに野球スクールが入っています。ただし曜日や時間によっては、まだ空いている枠がありました。
ここが重要なところです。使っていない時間帯にも、家賃も減価償却も水道光熱費も同じように発生します。稼働していようがいまいが、固定費は毎月出ていきます。何もしなければ、その空き枠はコストを食い続けるだけです。
逆に、必要としている人とつながれば、同じスペースが売上を生む資産に変わります。追加の投資はほぼ要りません。すでに払っている固定費の上に、売上だけが乗る形になるので、利益への効き方が大きい。
自社の遊休資産を洗い出す
この話は野球の練習場に限りません。中小企業でよく見かけるのは、次のようなものです。
- 繁忙期以外はほとんど動いていない機械や車両
- 在庫が減って空いたままの倉庫スペース
- 平日の日中しか使っていない会議室や研修室
- 特定の職人しか使っていない専用の設備
- 社内でしか使っていない技術やノウハウ
洗い出すときは、資産の一覧ではなく時間で見るのがこつです。この設備は週に何時間動いているか。空いているのはいつか。ここまで出せば、貸せる枠が具体的に見えます。決算書の固定資産台帳を眺めていても、この情報は出てきません。
競争ではなく、持ち寄りで組む
今回の話が面白いのは、組み合わせの形です。
練習場が場所を提供する。投手指導のコーチが育成のノウハウを提供する。すでに入っているスクールが打撃を教える。三者が同じ場所で競争するのではなく、得意なものを持ち寄る形になります。
それぞれの利益を見ると、こうなります。施設側は稼働率が上がる。コーチ側は新しい地域での接点ができる。利用する子どもたちは、打つ、投げる、身体をつくるを一つの場所で学べるようになる。誰かが取られる形になっていません。
同じ業界にいるというだけで競合だと考えると、この選択肢は出てきません。同じ顧客を奪い合っているのか、それとも顧客の別の困りごとを担当しているのか。ここを分けて見ると、組める相手が見つかります。
組む前に決めておく3つのこと
ただし、良い話に見えるほど、条件を曖昧にしたまま始まりがちです。あとで揉めないために、先に決めておきたいことが3つあります。
1つ目はお金の流れです。場所を貸す形なのか、売上を分ける形なのか。分けるなら何を基準に、どの比率でか。固定の賃料にすれば施設側は読みやすくなり、売上分配にすれば相手が集客に本気になります。どちらが良いかは、集客をどちらが担うかで決まります。
2つ目は顧客が誰のものかです。その場所で獲得した利用者は、施設の顧客なのか、コーチの顧客なのか。契約が終わったときにどうなるのか。ここを決めずに始めると、うまくいったときほど揉めます。
3つ目は既存の取引先への説明です。すでに入っているスクールから見れば、同じ場所に新しい相手が入ってくる話です。競合ではなく補完だと伝わっていなければ、不信になります。順番として、ここが最初かもしれません。
発信の目的は、自分を売ることだけではない
今回のご縁は、練習場を訪問した記事を書いたことから生まれました。
自分の商品を売るための発信ではありませんでした。見て、聞いて、良い会社だと感じたことを書いただけです。それを必要としていた人が見つけてくれました。
自社のサービスの宣伝だけを続けていると、届く相手は「今それを買いたい人」に限られます。一方、良いと思ったものを紹介していると、その周辺にいる人からも声がかかります。結果として、自分が全部を提供しなくてもよくなる。この人とこの人がつながったら面白い、という縁をつくることも経営支援のひとつだと考えています。
そしてこれからは、人に見つけてもらう経路そのものが変わります。検索で1位を取ることに加えて、AIに候補として挙げてもらえるかどうかが効いてきます。全国へ展開していく事業ほど、ここの準備が早いほうが有利です。
自社に使われていない資産がある。組めそうな相手がいるが条件の決め方が分からない。あるいは、良い仕事をしているのに見つけてもらえていない。そう感じている経営者の方は、まず60分、御社の話を聞かせてください。

