同じ商品が、ネットでも大型店でも買える。それでも特定の店に人が集まり続けることがあります。何が違うのか。先日、姫路市の Baseball Pro Shop WIN 様を訪問し、店舗と室内練習場を見学しながら、今後の経営支援についてご相談しました。そこで見たものが、この問いへの答えになっていました。
本稿は野球用品店の話ですが、結論は製造業でも建設業でも同じです。強みがあることと、その強みで選ばれることは別だという話をします。
その店は、用品店ではなかった
店内を見て最初に感じたのは、ここは単なる野球用品店ではないということでした。
道具選びの相談、グラブ診断、修理相談、室内練習場の活用、レッスンとの連携。野球に関わる悩みに幅広く対応されています。子どもがもっと練習できて、保護者が安心して相談できて、地域の中で野球を続ける力が育つ。用品を売る場所というより、地域のスポーツ拠点として機能していました。
特に印象的だったのが室内練習場です。天候に左右されず練習できる。自主練、反復練習、フォーム確認に使える。集中して取り組める。継続が力に変わる場所になっていました。
モノを売るだけでは、選ばれにくい
今の時代、同じ商品はネットでも買えますし、大型店にも行けます。価格で並べられたら、資本の大きいほうが勝ちます。
そこで選ばれるのは、ここに相談したい、ここなら安心、ここに来ればまた頑張れる、と思ってもらえる場所です。商品ではなく、判断を助けてくれることや、続けられる環境に対してお金が払われている。この構造は、小売に限った話ではありません。
選ばれている店が持っていた3つのもの
訪問して見えた強みを整理すると、3つありました。
- 現場を知っているから、本当に役立つ提案ができること
- 用品の販売だけでなく、練習環境まで含めて支えられること
- 子ども・保護者・地域との長い信頼を大切にされていること
いずれも、在庫の量や設備の新しさではありません。真似しようと思ってもすぐには真似できないものばかりです。だからこそ強みとして成立します。
強みは、あるだけでは伝わらない
ここからが経営支援の話です。
訪問して30分話せば分かるこの価値は、店の外からは見えません。知っているのは、すでに通っている人だけです。まだ来たことのない人にとっては、数ある用品店のひとつでしかない。
この状態は、中小企業でよく見かけます。技術も、人も、信用もある。足りないのは見つけてもらう入口だけ、というケースが本当に多い。良いものを持っていることと、それが伝わっていることの間には、思っている以上の距離があります。
すでにある価値を、選ばれる価値に変える
新しく何かを作る必要はありません。すでにあるものを、伝わる形に整えるだけで経営は強くなります。今回であれば、次のような打ち手が考えられます。
- Googleビジネスプロフィールでの発信を整える
- 練習場を使っている方の声を、見える形にする
- 試打会や体験の機会をつくり、来店の理由を用意する
- 保護者や地域の方が相談しやすい導線をつくる
- 地域に必要な場所であることを、言葉にする
順番があります。先に言語化してから、発信に進みます。何が強みなのかが決まっていない状態で発信量だけ増やすと、伝わらないまま手間だけが増えるからです。
そして最後に、それを店主一人ではなく、スタッフも回せる形にする。ここまで進んで、はじめて仕組みになります。
これは、小売店だけの話ではない
同じ構造は、製造業でも建設業でも起きています。
長年やってきたから当たり前になっている技術。困ったときに無理を聞いてきた対応。特定の職人しかできない工程。社内では当たり前すぎて、誰も価値だと思っていない。だから発注側にも伝わっていない。価格でしか比べられなくなるのは、たいていこの状態です。
後継者がいないという理由で会社が終わるとき、多くの場合、技術も人も信用も残っています。失われるのは、それが誰にも見える形になっていなかったからです。強みの言語化は、集客の話であると同時に、会社を次に渡すための準備でもあります。
すでにある価値を、選ばれる価値に変える。これが経営支援の本質のひとつだと考えています。
自社の強みが何なのか、社内で言葉が揃っていない。あるいは、伝わっている実感がない。そう感じている経営者の方は、まず60分、御社の話を聞かせてください。
このたびは貴重なお時間をいただき、また本稿の掲載をご快諾いただき、Baseball Pro Shop WIN 様に御礼申し上げます。子どもたちと家族が本気で挑戦し続けられる環境を、地域に持続可能な仕組みとして残していく。素晴らしい使命だと思います。これからがますます楽しみです。
Baseball Pro Shop WIN 様
本稿で紹介した店舗と室内練習場です。野球用品の相談、グラブ診断、修理、練習場の利用については、下記からご覧いただけます。

