先日、経営者の方から「LLMO対策はされていますか」と聞かれて、言葉の意味すら答えられませんでした。財務のことは語れるのに、自社が見つけてもらう入口のことは何も考えていなかった。中小企業診断士としては、なかなか情けない話です。
そこから2週間、教わったとおりに手を動かしました。結果として「大阪 CFO コンサル」「吹田 CFO」といった検索で、AIが表示する要約の中に自社の名前が出るようになりました。本稿では、実際にやったことと、途中で分かった意外な事実を、そのまま書きます。きっかけをくださった田中紗代さん(『店舗やサロンのためのLLMO集客・販促の教科書』著者)に、あらためて御礼申し上げます。



顧客はもう、10件のサイトを見比べていない
自分の行動を振り返って気づいたことがあります。何かを調べるとき、検索結果を10件ひらいて比べる、ということをもうしていません。上に出てくる要約を読んで、それで判断を終えています。
お客様も同じことをしています。つまり、自社が「その要約の中に入っているかどうか」で、検討の土俵に乗るかどうかが決まる。これまでの検索順位とは、意味合いが変わってきています。
LLMOとは何か——SEOと何が違うのか
LLMOは、大規模言語モデル(LLM)に自社を正しく認識させ、質問への答えの中で言及されるようにする取り組みを指します。よく「Googleの『AIによる概要』に載ること」と説明されますが、それは表に見えている一面です。ChatGPTやPerplexityに「大阪で社外CFOを探している」と聞かれたときに名前が出るかどうかも、同じ話に含まれます。
SEOとの違いは、対象がページかエンティティかという点です。SEOは「このページを上位に出す」ための取り組みでした。LLMOは「この会社は何者で、どこで、何を、誰に提供しているか」を機械が誤解なく理解できる状態をつくる取り組みです。順位を取りにいくのではなく、認識を整えにいく。ここが根本的に違います。
中小企業ほど効きやすい理由
大企業と検索順位を争うのは容易ではありません。しかしLLMOは事情が違います。理由は2つあります。
ひとつは、まだ着手している会社が少ないことです。とくに地域と業種を掛け合わせた領域では、正しく整備している会社がほとんどいません。空いているところに入るほうが、埋まっているところを押しのけるより早いのは当然です。
もうひとつは、中小企業の強みが「特定の領域に絞られていること」だからです。AIは曖昧な会社より、対象と提供内容が明確な会社のほうが答えに引用しやすい。絞り込みが弱点にならず、そのまま武器になります。
やったことは、ほとんど「掃除」だった
新しく何かを作る前に、既存の状態を整えるほうが効きました。実際にやった順番はこうです。
- 同じ会社名で複数のサイトが生きていないかを確認し、公式サイトを1つに寄せる
- 構造化データ(JSON-LD)を整え、会社を1つ、人物を1人として識別子を統一する
- 外部にあるプロフィールを、その構造化データから相互に参照させる
- robots.txtとサイトマップが正常に応答しているかを実際に確認する
- 記事のタイトルを、実際に検索される言葉で書き直す
- 地域とサービスを掛け合わせたページを1枚つくる
いちばん効いたのは1番目でした。当社の場合、旧ドメインが同じ会社名・同じ内容のまま公開され続けていて、機械から見て「株式会社フエルの公式サイトはどちらか」が判定できない状態になっていました。この状態では、片方をいくら整えても、もう片方が打ち消します。
構造化データも、書いてあれば良いというものではありません。当社は会社概要ページのJSON-LDが壊れており、書いてあるのに読めていませんでした。この種の不具合は、画面を見ているだけでは気づけません。
AIの推奨は、自社サイトからは作られない
ここが今回いちばんの発見でした。
AIが「おすすめは?」という問いに答えるとき、自社サイトの自己紹介はほとんど根拠になりません。使われるのは、第三者が書いた比較記事、業界メディアの掲載、専門家のデータベースです。自社サイトは、そこで挙がった名前が実在するか、所在地や提供内容と矛盾がないかを確認するために参照されます。
つまり、自社サイトをいくら磨いても、第三者の記事に1件も載っていなければ、推奨候補には入りません。当社の場合、所属する中小企業診断士会に会員ページが実在していたことが、この実在確認として機能していました。逆に言えば、そこから先の「第三者に取り上げられる」段階には、まだ手をつけられていません。ここが次の課題です。
この構造を知らないまま自社サイトだけを作り込むと、費用も時間も効かないところに投じることになります。
2週間後に起きたこと
結果は次のとおりです。
- 「社外CFO 大阪 中小企業 財務支援」で、新設した地域ページが公開2日で3位に表示
- 「大阪 CFO コンサル」「吹田 CFO」「吹田 財務 コンサル」のAI要約の中に、社名が掲載
広告費はかけていません。やったのは上に書いた掃除だけです。立ち上がりが速いのは、繰り返しになりますが、この領域がまだ空いているからです。
入口ができたあとに、必ず起きること
ここから先は、財務と組織の話になります。
入口が広がると、当然ながら問い合わせが増えます。そのとき問われるのは、受け止める側の体制です。人が足りない、育つ前に辞める、誰が何をどこまでやるのかが曖昧、という状態のまま入口だけを広げると、取りこぼしが増えるだけで、現場が疲弊します。集客に投資したのに利益が残らない会社は、たいていここでつまずいています。
だから当社は、入口づくりと、数字の設計と、人の仕組みを切り離さずに見ています。どれだけ問い合わせが来ても、粗利が残らなければ意味がない。人が続かなければ、受けた仕事を回せない。評価と賃金の設計が曖昧なままでは、増えた仕事が不満に変わります。
今回のLLMO対策は、自社で実際に手を動かし、結果まで確認できた取り組みです。だからこそ、同じ手順を他社にもお伝えできます。そして、その先で必ず必要になる財務と組織の設計も、同じ担当者が続けて見られる。ここが、集客だけを請け負う会社との違いだと考えています。
まとめ
- LLMOは順位を取る取り組みではなく、会社の認識を機械に正しく持たせる取り組み
- 新規制作より先に、ドメインの重複と構造化データの不具合を掃除するほうが効く
- AIの推奨は自社サイトではなく第三者の記事から作られる。ここを知らないと投資先を間違える
- 地域と業種を掛け合わせた領域はまだ空いており、中小企業ほど立ち上がりが速い
- 入口を広げたあとは、必ず財務と組織の設計が問われる

