評価制度を入れた会社で、必ず起きること

人事評価制度を入れて、1年目の賞与の時期になると、だいたいこうなります。
評価は出ています。A評価が3人、B評価が12人、C評価が2人。制度どおりに点数もついている。
そこで社長が電卓を持ち、こうつぶやきます。
「で、今年はいくら出せるんやったかな」
ここです。ここで止まる会社が、本当に多い。
評価は決まっているのに、配る総額が決まっていない。だから最後は社長の感覚で「今年はこれくらい」と決まる。決まった総額を、あとから評価点で割り振る。
順番が逆になっています。そして社員は、この逆転に気づきます。
社員が気づいているのは「額」ではなく「決まり方」
よく誤解されるのですが、社員が不満を持つのは金額そのものではありません。
「なぜその額なのかを、誰も説明できない」ことです。
A評価をもらった社員が、去年のB評価のときと大差ない賞与を受け取る。理由を聞いても、上司が答えられない。上司も知らないからです。総額の決まり方を知っているのは社長だけです。
こうなると、評価制度は「頑張っても関係ない」ことを証明する装置に変わります。入れないほうがマシだった、という状態です。
制度が悪いのではありません。制度と会社の数字が、つながっていないだけです。
つなぐものが「分配率」
必要なのは、たった1つの決めごとです。
粗利のうち、何%を人件費に充てるか。
これを先に決める。決めてから配る。順番はそれだけです。式そのものは、調べればどこにでも書いてあります。問題は式ではありません。実際にやろうとすると、こう詰まります。
- うちの付加価値って、いくらなんだ(試算表のどこを見ればいいのか分からない)
- 何%が適正なんだ(業種で全然違う。同業他社の数字は手に入らない)
- 決めた率を、来年も守れるのか(業績が落ちたら下げるのか。下げると言えるのか)
この3つに答えられる人が、社内にいません。だから決まらない。決まらないから、毎年、社長の鉛筆が出てくる。
数字を作る人と、決める人は違う
顧問税理士は、付加価値を計算できます。試算表も作ってくれます。
ただ、「では御社は何%にしますか」は税理士の仕事の外側です。それは経営判断だからです。
人事コンサルタントや社労士は、評価制度を設計できます。等級も、評価項目も、フィードバックの手順も作れます。
ただ、「その原資は今年いくらか」には答えられません。会社の数字を毎月見ていないからです。
分配率は、その2つの真ん中に落ちています。だから、どちらの専門家に頼んでも決まらない。
決めると、何が変わるか
分配率が決まると、社長が話せるようになります。
「今期、会社は◯◯円の粗利を出した。うちは、そのうち◯%を人件費に充てると決めている。だから賞与の原資は◯◯円。その中で、あなたの評価はAだから、この額になる」
長くありません。3行です。
でもこの3行が言えるかどうかで、同じ金額を渡しても、社員の受け取り方がまるで変わります。
そしてもう一つ。社長が楽になります。毎年の賞与の時期に、一人で抱えて悩む作業がなくなる。ルールが決めてくれるからです。
業績が落ちた年のほうが、効きます
「業績が悪い年に下げると言えるのか」——よく聞かれます。
逆です。ルールがある会社のほうが、下げられます。
ルールがなければ、賞与を減らすのは社長個人の決断になります。恨まれるのは社長です。
ルールがあれば、「粗利が去年より◯%減ったので、原資も同じだけ減る」と説明できます。数字が決めたことになる。そして社員は「じゃあ粗利を戻せば戻るんだな」と理解します。
これは、下げるための仕組みではありません。下がった年に、会社と社員の関係を壊さないための仕組みです。
進め方
順番があります。飛ばすと必ず戻ります。
- 粗利と人件費の実額を出す——まず現状の分配率を知る。ここで多くの社長が驚きます
- 業種の水準と比べる——高いのか低いのか。業種差が大きいので、自社の推移で見るほうが確かです
- 来期の率を決める——ここは経営判断。決めるのは社長です
- 評価点への割り振り方を決める——ここで初めて評価制度とつながる
- 社長が説明する場をつくる——制度は説明された瞬間に動き出します
4だけをやると失敗します。ほとんどの人事評価制度の導入が、4から始まっているように見えます。
大阪・関西の中小企業へ
株式会社フエルは大阪府吹田市を拠点に、中小企業の財務と人事評価制度を一体で設計しています。
財務コンサルタントが評価制度をつくるのは珍しがられます。でも逆に聞きたいのです。人件費を設計せずに、どうやって利益を設計するのか。
数字と人は、切り離せません。切り離した瞬間に、どちらも動かなくなります。
まずは自社の分配率を出してみてください。その数字を見て手が止まったら、そのときにご相談ください。

