18歳になった日と、一人で生きられる日は同じではない。
2026年7月24日、経営実践研究会の視察研修で、児童養護施設の高鷲学園様を訪問しました。私は児童養護施設について、知らないことばかりでした。
施設を出た瞬間に、支えが切れる
子どもたちが施設に入る背景には、虐待やネグレクトなど、本人には何の責任もない事情があります。施設では、職員の方々が生活を支え、食事、学校、通院、将来の相談まで、懸命に寄り添っています。
しかし、施設を出た瞬間、状況が大きく変わります。住む場所を探す。仕事を続ける。お金を管理する。役所の手続きをする。体調を崩したら病院へ行く。
私たちが家庭の中で少しずつ教えてもらったことを、短い期間で、一人で身につけなければならない若者もいます。
さらに苦しかったのは、その孤独や知識の少なさにつけ込み、退所後の若者を食い物にしようとする大人がいるという現実です。話を伺いながら、胸が詰まりました。
会社に置き換えると、よく分かる
新入社員を採用して、初日から何も教えず、「今日から一人で成果を出してください」とは言いません。先輩をつけ、仕事を教え、困ったときに相談できる場所をつくります。
ところが社会は、施設を出た若者に対して、それに近いことを求めているのかもしれません。
人がつまずくのは、本人の根性が足りないからとは限りません。支えてくれる仕組みが、途中で切れてしまうことにも原因があります。
採用がゴールではない
これは経営でも同じです。採用することがゴールではない。入社後も安心して働き続けられる仕組みが必要です。
求人広告に費用をかけ、面接に時間を割き、ようやく一人採用する。けれど入社後の設計がないまま現場に配属すると、本人は「何を期待されているのか」が分からないまま時間が過ぎます。評価の基準が曖昧で、成長の実感もない。そうして辞めていきます。採用コストは、回収される前に消えます。
評価制度をつくる仕事をしていて、いつも思うことがあります。制度は、点数をつけるための道具ではありません。「あなたに何を期待しているか」を言葉にして、育つ道筋を見せるための仕組みです。
自立支援も、施設を出たら終わりではありません。住まい、仕事、お金、健康、相談できる人。これらがつながって初めて、安心して次の一歩を踏み出せます。会社の中で起きていることと、構造は同じです。
では、経営者として何ができるのか
私はまず、こうしたことから始められると思っています。
- 職場体験や職業紹介の機会をつくる
- 若者を受け入れる企業側の仕組みを整える
- 給与明細、家賃、契約、ローンなど、お金の知識を伝える
- 住まいや仕事を支援できる人をつなぐ
私の仕事は、経営者の隣で数字と人を整え、会社を次の世代へつなぐことです。ならば、その経験を使って、企業と若者の間に橋を架けることもできるはずです。

想いを、続く仕組みに変える
寄付をして終わるのではなく、働く機会をつくる。採用して終わるのではなく、続けられる環境をつくる。一度助けて終わるのではなく、困ったときに戻ってこられる関係をつくる。
「想いを、続く仕組みに変える。」これは会社経営だけではなく、子どもたちの未来にも必要な考え方だと感じました。
退所後も、住まいや就職、通院、生活相談まで支え続けている高鷲学園の皆さま。厳しい現実も含めて、私たちに率直に伝えてくださり、ありがとうございました。そして、現場を知り、経営者として何ができるかを考える機会をつくってくださった経営実践研究会の皆さまにも、心より感謝申し上げます。
視察して、知って、胸を痛めるだけでは何も変わりません。大切なのは、ここから何をするか。私自身も、まずは自分にできる小さな一歩を、具体的な仕組みに変えていきたいと思います。
企業として、就労体験、雇用、住まい、教育などで協力できる方がいらっしゃれば、ぜひ一緒に考えられるとうれしいです。

