「資金繰りを良くしたい」と相談に来る社長の多くは、「売上を増やすしかない」と思い込んでいます。
でも実際には、売上を1円も増やさずに手元資金を厚くする方法が10以上あります。むしろ売上を増やすほど資金繰りが苦しくなるケースすらある。社外CFOとして現場で使っている打ち手を、優先順位つきで全部並べます。
資金繰り改善の大原則——順番を間違えない
資金繰り改善には鉄則の順番があります。①出ていくお金を止める → ②お金の回りを速くする → ③入ってくるお金を厚くする。多くの社長は③(売上増・借入)から着手しますが、穴の空いたバケツに水を注ぐことになりがちです。
また、打ち手の前に現在地の把握が必要です。まず生存月数(手元資金÷月の固定費)を計算し、月次の資金繰り表を用意してください。危険度によって、打つべき手の優先順位が変わります。
資金繰り改善の打ち手10選
1. 入金サイトを短縮する
請求書を月末まとめ発行から納品即発行に変える。回収条件を「翌々月末」から「翌月末」に交渉する。新規契約から前受金・着手金を設計に入れる。地味ですが、入金が1ヶ月早まるだけで月商1ヶ月分の運転資金が浮きます。
2. 支払サイトを適正化する
入金より支払いが先に来る構造を直します。仕入先との交渉のほか、経費支払いを法人クレジットカードに寄せると、実質的に支払いを最大2ヶ月近く後ろにずらせます。ポイント・マイルという副産物も生まれます(詳しくは著書『0円ファーストクラスとキャッシュが残る法人クレカ戦略』にまとめています)。
3. 在庫を圧縮する
在庫は「現金に戻っていないお金」です。動いていない在庫の処分セール、発注ロットの見直し、売れ筋への絞り込み。帳簿上は損が出ても、現金は増えます。
4. 遊休資産・保険を見直す
使っていない車両・機械・不動産の売却。節税目的で入った積立型保険の解約返戻金や契約者貸付。「なんとなく持っている資産」は、現金化の候補です。
5. 固定費のサブスク棚卸し
使っていないシステム利用料、惰性のリース契約、実態に合わない事務所家賃。固定費の削減は一度やれば毎月効き続けるので、変動費削減より優先度が高い打ち手です。
6. 人件費は「削る」前に「構造を見える化」する
人件費は最大の固定費ですが、安易に削ると採用難の時代には逆効果です。まず給与の会社負担は手取りの約1.5倍という構造を社長と社員が共有し、昇給・賞与を利益と連動させる仕組み(人事評価制度)に変えることが本筋です。
7. 借入の返済条件を見直す
複数の借入を長期の1本に借り換えて月々の返済額を圧縮する。据置期間を設定する。これは「リスケ(返済猶予)」とは別物で、信用を保ったまま月々のキャッシュアウトを減らす正攻法です。
8. 平時に借入枠を確保する
銀行は雨の日に傘を貸してくれません。業績が良い平時にこそ、当座貸越枠や追加融資枠を確保しておく。決済代行会社の倒産のような不測の事態に耐えられるかは、平時の準備で決まります。
9. 補助金・助成金を織り込む
設備投資や新規事業には補助金を活用できます。ただし入金は採択から半年〜1年後。「補助金があるから大丈夫」と先に支出すると、かえって資金繰りを悪化させます。資金繰り表に入金時期を織り込んで使うのが鉄則です。
10. 出張・経費決済まわりを最適化する
出張の多い会社なら、旅費規程を整備して日当を活用すると、会社は損金・受け取る側は非課税という合法的なキャッシュ改善ができます。決済をカードに集約すれば経理工数も減る。小さく見えて、年間で数十万円〜百万円単位の差になる領域です。
やってはいけない資金繰り対策3つ
- 高金利のビジネスローンに安易に頼る——金利が資金繰りをさらに悪化させる悪循環の入口です
- ファクタリングの常用——手数料が重く、一度使うと抜けにくい。緊急避難以外では推奨しません
- 税金・社会保険料の滞納——延滞ペナルティに加え、融資審査で致命傷になります。苦しいときは滞納ではなく、先に銀行と支払条件の相談を
どこから手をつけるか——優先順位の目安
| 状況 | 最初にやること |
|---|---|
| 生存月数3ヶ月未満 | 7(返済見直し)と1(入金前倒し)を即実行。並行して銀行に相談 |
| 生存月数3〜6ヶ月 | 5(固定費棚卸し)と2(支払サイト)で出血を止め、8(借入枠)を確保 |
| 生存月数6ヶ月以上 | 10(決済最適化)や9(補助金)で攻めの資金効率を上げる |
まとめ——資金繰り改善は「売上以外」から始まる
10の打ち手に共通するのは、どれも「売上を増やさなくてもできる」ことです。そして、どの打ち手をどの順番で打つかの判断には、自社の数字を厳しく読む「外の目」があると精度が上がります。
自社ならどこから手をつけるべきか——数字を見ながら一緒に考えたい方は、初回の無料相談でお聞かせください。
この記事を書いた人
矢野誠(やの・まこと)|株式会社フエル代表・社外CFO。中小企業診断士・事業承継士。製薬大手で20年、財務管理の実務を経て独立。大阪を拠点に、中小企業・医療機関の資金繰り改善・事業承継・人事評価制度構築を支援。「会社の未来予想図を、数字で描く社外CFO」。社外CFOの役割・費用相場はこちら/黒字倒産の防ぎ方はこちら

