
「 先 生 、その技術。日 本 に置いていく気、ありますか?」
僕が思わずそう聞いてしまったのは、
ある開発の現場でした。
目の前にあったのは、
世界でもほんの一握りしか作れない、
最先端の医療機器。
何十年もかけて、
何人もの研究者が、
それこそ人生を削って
積み上げてきた結晶です。
でも、開発を続けるにはお金が要る。
だから、海外と組む話のほうが、
先に進んでいました。
それ自体が悪いわけじゃない。
ただ僕は、その瞬間、
なんとも言えない
気持ちになったんです。
研究者の方って、本当に純粋なんですよね。
「自らの研究成果を世に出したい」
「目の前の患者さんを、なんとか救いたい」
そのたった一つの願いのために、
来る日も来る日も、
技術を磨いてこられた。
頭が下がります。本当に。
でも——
お金の流れ。
交渉の順番。
誰を、どのタイミングで巻き込むか。
そういう「経営の言葉」だけは、
誰も教えてくれなかったんです。
世界を変える力は、もう、その手の中にある。
なのに、それを世界に届けるための
”地図”だけが、ぽっかりと
手元になかった。
僕はその日、つい熱くなって、
喋りすぎました(笑)
あれもできます、これも繋げます、
あの人も紹介できます、と。
帰りの道すがら、ひとり反省したんです。
良かれと思って全部を背負い込むと、
かえって相手の動きを縛ってしまう。
「巻き込む」というのは、
自分が前に出ることじゃない。
相手がいちばん動きやすい道を、
そっと整えて、一歩引くこと。
頭では分かっていたはずなのに、
現場ではつい、力が入ってしまう。
僕もまだまだ、未熟だなぁと思いました。
ここからは、僕がずっと
心に置いていることです。
日本には、世界最高水準の技術が、
まだいくつも眠っています。
ある分野では、世界のトップを走っている。
それくらいすごいものが、
この国の研究室には、確かにある。
でも、お金がない、という理由だけで。
育ててくれた日本を一度も通らないまま、
ぜんぶ海外に流れていってしまう。
そんな未来は、やっぱり悔しいんです。
安売りして手放すんじゃない。
まず、日本の仲間を巻き込む。
そして「メイド・イン・ジャパン」
として、堂々と世界へ届ける。
さらにその先の、次の世代へと、
ちゃんと引き継いでいく。
技術を生み出す人がいて。
それを世に届ける人がいて。
その恩恵を受け取る、未来の患者さんがいる。
この三者が、全員笑っている。
そういう絵を描けたときに、
初めてこの仕事は完成するんだと思います。
経営の参謀って、たぶん、そのためにいる。
派手な戦略を授ける人じゃなくて。
技術者の孤独の、すぐ隣に立って。
彼らの夢を、世界に「届く形」に翻訳していく人。
それが、僕がこの仕事を続けている、
いちばんの理由です。
まだ道の途中ですが——
この景色を、いつか必ず形にします。
ひとつだけ、教えてください。
あなたの仕事の中に、
「これは本当は、もっと世界に届けたい」
と思っている”宝”はありますか?
私の仕事は、技術者の夢を、
事業として持続する形へ翻訳することです。
もし、
「技術はある。でも、誰に相談すれば
いいか分からない」
そんな研究者や経営者の方がいたら、
まずは一緒に地図を
描くところから始めましょう。
