
承認は、褒め方の技術ではありません
評価制度を作ったのに、動いていない。
面談の予定は入っている。シートも配ってある。それでも、半年後に見に行くと止まっている——という相談をよく受けます。
このとき、原因を「上司の褒め方が下手だから」に置くと、たいてい解決しません。研修で褒め方を教えても、翌月には戻ります。
問題は技術ではなく、配置だからです。
「承認」には種類があり、それぞれ置くべき場所が違います。置き場所を間違えたまま研修だけを足しても、制度は動きません。
3つの承認とは何か
一般には、次の3つで整理されます。
| 種類 | 何を認めるか | 例 |
|---|---|---|
| 結果承認 | 出した成果 | 「目標を達成できましたね」 |
| 行動承認 | やっている行動 | 「毎朝いちばんに来ていますね」 |
| 存在承認 | そこにいること | 挨拶をする。変化に気づいて声をかける |
順序としては、存在承認が土台にあり、その上に行動承認、さらに結果承認が乗ります。結果承認と行動承認は短期の動機づけに効き、存在承認は長期の意欲を支える——ここまでは、この分野の一般的な整理です。
問題は、その先です。
どこに置くか — 評価表と面談で役割を分ける
社長が決めるべきなのは「どう褒めるか」ではなく、3つの承認を、制度のどこに置くかです。
結果承認は、評価表がすでにやっている
結果を認める仕組みは、評価表そのものです。点数がつき、等級が動き、賞与に反映される。
だから面談で結果承認を繰り返す必要はありません。
にもかかわらず、多くの面談は結果の確認で終わります。シートを読み上げ、点数を伝え、来期の目標を確認して15分。これは評価表がすでにやったことの復唱です。
行動承認は、評価項目の粒度で決まる
行動を認めるには、何が「その行動」なのかが決まっていなければなりません。
ここでよく起きるのが、評価項目にこう書いてあるケースです。
「積極的に業務に取り組んでいる」
「責任感を持って行動している」
悪い言葉ではありません。ただ、これを項目に置くと、評価者によって点が変わります。Aさんは4点、Bさんは2点。どちらも間違っていません。「積極的」の中身が、二人の頭の中で違うからです。
見分け方はひとつです。その項目を、3人の評価者が別々に見て、同じ判定になるか。
×「積極的に報告している」→ 何回すれば積極的なのか、決まっていない
○「日報を、毎営業日18時までに出している」→ 出ているか、出ていないか。誰が見ても同じ
言葉としては味気ないほうが、制度としては強くなります。そしてこの粒度まで落として初めて、行動承認は具体的な一言になります。
存在承認は、頻度でしか作れません
存在承認は、言葉の選び方ではなく回数の問題です。
年1回の評価面談しかない会社で、存在承認は成立しません。半年ぶりに座って「いつも見ているよ」と言っても、届かないからです。
ここは制度の設計で決まります。面談の頻度を、社長が決めるしかない。
現場で起きること
2週間に1回・15分から始めた例
ある製造業(従業員20名以上)では、評価制度の導入後に2週間に1回・15分の面談を置きました。
長い面談を月1回にするより、短い面談を2週間に1回のほうが定着しています。15分なら予定に入れやすく、間が空きすぎないためです。
ここで扱うのは結果ではなく、行動と、変化への気づきです。結果は評価表が持っているので、面談は別の役割を持たせています。
「書くのは嫌だが、話すのは問題ない」
別の会社(卸売業)で聞いた言葉です。
面談シートの記入率が上がらない。理由を聞くと、書くことへの抵抗であって、面談そのものへの抵抗ではありませんでした。
このとき、記入率を上げようとして督促を増やすと、制度への反発が強くなります。書式のほうを軽くする、あるいは話した内容を上長が記録に落とす——制度側を現場に合わせるほうが、たいてい早く動きます。
制度が動かない、いちばん多い理由
最後に、身も蓋もない話をひとつ。
評価制度を作って、配って、説明会もやった。それでも動かない。このとき原因が制度の出来だったことは、あまりありません。
決めた型を、一度も使っていないのです。
面談シートは配られている。でも、最初の1回を誰もやっていない。やらないまま3か月経つと、もう誰も言い出せなくなります。
ですから制度を作ったあとは、「最初の1回をいつやるか」だけを決めるようにしています。
日付を1つ入れる。それだけで動き出すことがあります。制度が悪いのではなく、始まっていないだけ、ということが本当に多いのです。
よくある質問
承認と評価は、同じものですか。
違います。評価は序列をつけて処遇に反映するもの、承認は事実を認めて伝えるものです。評価表が結果を扱い、面談が行動と存在を扱う——この分担にすると混ざりません。
面談の頻度はどのくらいが適切ですか。
決まった正解はありません。ただ、年1回では存在承認は成立しません。2週間に1回・15分から始めて、続かなければ月1回へ落とすほうが、最初から月1回で始めて形骸化するより定着しています。
評価項目に「積極性」「責任感」を入れてはいけないのですか。
入れると、評価者によって点が割れます。3人の評価者が別々に見て同じ判定になるところまで、行動で書き直すことをお勧めします。
まとめ
- 承認は褒め方の技術ではなく、制度のどこに置くかの問題
- 結果承認は評価表がやっている。面談で繰り返す必要はない
- 行動承認は、評価項目の粒度で決まる。3人が見て同じ判定になるまで具体化する
- 存在承認は、頻度でしか作れない。年1回の面談では成立しない
- 制度が動かない最大の理由は出来ではなく、最初の1回をやっていないこと
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現状の評価表と面談の頻度を伺って、どこから直すかを一緒に整理します。

